「長期投資なら株式比率を100%にすべきだ」とノーベル経済学賞受賞のリチャード・セイラーは主張

超長期のポートフォリオ

米シカゴ大学大学院のリチャード・セイラー教授が「行動経済学」で2017年のノーベル経済学賞を受賞。

そんなセイラー教授の「株式投資のすゝめ」の前に、先にその逆をいく警鐘に触れておこう。

リチャード・セイラー「我々は人生において最もリスクの高い瞬間を生きているようなものだ。だが、株式市場はまだ油断しているようだ」
Business Insider

超長期では株式投資比率100%にすべきというセイラー教授ですら、現在の株高には慢心が見られるという。

超長期で運用できる資産は株式100%にすべき

セイラー教授は1994年に
“College and University Endowment Funds: Why Not 100% Equities?”
という論文で、大学寄附基金のような個人よりも長いスパンで運用できる運用主体にとって概ね株式50:債券50だとか株式60:債券40などのバランスで資産運用するのがスタンダードであることに疑問を投じ、大学寄付基金をなぜ株式比率100%で運用しないのか?と問いかけている。

教授の主張を支えるデータはこの論文以外にも

株式投資のリターン
Source: ジェレミー・シーゲル著「株式投資」

個人投資家にも人気のシーゲル教授の株式投資の未来本でも有名な株式投資とその他の投資対象のリターン比較がはっきりと記されている。

“Cash is King”とはいうものの、超長期ではインフレで減価するペーパーマネーであるドル現金は最も危険な”投資先”の1つだった。それゆえ暗号通貨のような投資対象が物色されているのだろう。

また、巡り巡ってトマ・ピケティの21世紀の資本論でも株式投資の優位性が示されている。

付け加えると、全世界の全投資家を集計したグローバル・マーケット・ポートフォリオの最近の研究によると

1959-2015-real-return-four-asset-categories
Source: Historical Returns of the Market Portfolio

1960-2015年で年8.4%の利益で、その内訳として

株式は年9.5%のリターン
不動産9.2%
非政府債(投資適格級とHY)7.4%
国債7.0%

と株式のリターンがやはり最も高い。

筆者が株式投資に本腰をいれたのもこれらのような過去のデータ(バックミラー)からであり、そこからデータだけではない肉付けとしても、株式投資はゼロサム・ゲームの「ギャンブル」ではなく、株式という仕組みはビジネスの一部を所有するイメージで、各国の年金や政府ファンド、そして保険を支える、社会として”支えなければならない仕組み”であることからボラティリティの高さはともかく株式投資を全く行わないというのはモッタイナイという判断につながったのだった。

極めてシンプルな過去のこれらのデータですら知らない人はまだ多いだろうし、バブル崩壊の反省からかメディアは株式投資=利食いタイミングが重要のような印象を与える記事や報道がまだまだ多いように思う。

利子や配当の範囲での支出に限定する制約

セイラー教授の株式100%にすべきという論文の話に戻ろう。

大学寄附基金では、ただ貯め込むのが目的ではなく基金から支出を行うこともあり、その原資を利子や配当などのインカムゲインの範囲に限る制約がある場合がある。

そのため債券のような固定利付の資産をある程度保有することが無難であろうという判断にも一部つながっているわけだが、それをふまえてもセイラー教授は株式100%が良いという。

これはウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが配当を出していないがゆえに配当生活者がバークシャー株 $BRK.B を保有していないことに近い。

実際のところ配当というものは株主還元の一部分でしかなく、自社株買いという選択肢をとる企業もあるし、また巡り巡ってR&D、企業買収などによるトータルリターンが優れていることだってあるだろう。

実際のところ、無配当のバークシャー・ハサウェイを配当を出しているものと見なして毎年3%程度売却しても問題がないわけだ。

このように配当がトータルリターンに大きく貢献しているのは事実ではあるが、配当にこだわると投資先の選択肢を狭めてしまうデメリットもある。

そのあたりの話はいずれまた触れるとして、ともあれ、過去のリターンに限っていえば株式投資が超長期でみればもっともリターンがよかったという事実があるということを知っておくと良いだろう。